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第0113話 首塚の碑

首塚の碑再建へ

 本日(2011(平成23)年4月23日(土))、鵠沼地区現存最古の記念碑だった「首塚の碑」の再建式が挙行されるはずだった。諸般の事情で4月29日(金)11:00~に延期されたそうである。
 それに併せてこの項を立てたので、いささか残念である。この千一話は原則として編年記順に項を立てているので、再建については最終段階で項を立てることになろう。
 さて、この千一話スタート段階では、「首塚の碑」は鵠沼地区現存最古の記念碑だった。
 記録では、第0079話で紹介した1808(文化 5)年 8月15日の「堀川改修記念碑」の方が古いが、現在の碑は1932(昭和 7)年8月23日に再建されたものである。
 今年の2月3日(木)に、鵠沼公民館の催しで「相模国準四国八十八箇所」のうち鵠沼地区にある札所を案内した時には、前を通りかかったついでに若干の解説を加えた。ところが、4月に入って前を通ったら、碑は台座ごとすっかり消えて、更地にコンクリートが張ってあった。通りかかった近所の方に尋ねてみたが、ご存じないとのことだった。
 1週間ほどたって夢を見た。「ああ、あれは3月11日の地震でぶっ倒れて、粉々になったので処分したんだよ」という話を聞いたというものである。あり得る話ではないか。.
 面白かったので、wifeに話してみた。早速、知り合いの宮ノ前町内会のM氏に電話を掛けてくれて事情が判明した。
 余りにも風化剥落が激しいのを見かねた林石材産業㈱社長の林 一郎氏が自費で再建を申し出て、宮ノ前町内会長のW氏や有志のM氏らと検討し、藤沢市生涯学習課の文化財担当者にも連絡を取って、黒御影石の碑と白御影石の台座という形で再建することになったというものである。
 宮ノ前町内会の有志では、毎年春秋の彼岸には万福寺・空乗寺両寺院の住職による供養を欠かさなかった。今年の春の彼岸の供養の後、碑の魂を抜いて取り壊したという。
 私が残念に思うのは、旧碑の処置である。生涯学習課では適当に処分してよろしいということで、廃棄処分になったという。次に述べるが、旧碑は他に類例を見ないかなり特殊な記念碑だった。風化剥落により判読不能ではあったが、明治初期にはこんな特殊な石碑が建てられたという文化財としての価値はあったと思う。
 何度でも繰り返して主張するが、藤沢市は公立の博物館も美術館も文学館もないという全国唯一の40万都市である。「博物館建設準備担当」というのが置かれているが、収蔵庫は満杯で、充分な学芸員も配置されていない。文化財に対する配慮が行き届かないため、みすみす失われる文化財が多いのではなかろうか。

首塚の碑

 『皇国地誌村誌相模国高座郡鵠沼村』では、

 首塚 中央ヨリ西北隅字宮前ニアリ暴ニハ塚上ニ庚申塔一基松一株アリ里人之ヲ首塚或ハ金堀塚又ハ庚申塚ト唱ヘ  其何タル不分明ナレハ曽テ之ヲ発(アハ)クニ首骨数十百脚骨四アリ集メテ之ヲ一瓶ニ納メテ改塹シ其上ニ碑ヲ樹テ   首塚卜標ス何人等ノ枯骨ナルヤ知ベカラス
と出てくる。
 これが刊行されたのが1879(明治12)年2月。ほぼそれと同時に「首塚の碑」が建てられた。
 『皇国地誌』の総閲者は神奈川県令=野村 靖。そして、「首塚の碑」の題額も野村 靖によって書かれた。
 野村 靖の五女=初子は松岡静雄に嫁ぎ、1922(大正11)年以来鵠沼海岸に住んだ。松岡静雄については別項を立てる予定である。その子孫は今もお住まいで、静雄の孫にあたる故松岡 喬氏は「鵠沼を語る会」の会員として活躍された。氏の遺稿ともいうべき文=「「首塚」の碑と野村 靖」が『鵠沼』第88号に掲載されている。
 首塚は「金堀塚」とも呼ばれ、空乗寺の山号にもなっているのだが、現在は失われ、その正確な位置も判然としない。碑文では「永正の頃、殊に国のうち乱れて戦いの巷になったので、その頃のものと思われる」としているのだが、私は古墳時代のおそらく円墳ではなかったかと思うと第0023話に記しておいた。
 碑文の文章形式は「和歌の詞」と呼ばれるものである。「和歌の詞」とは末尾に和歌をおいて、その前に「なぜその歌が詠まれたのか」という事情や経過を「けり」による叙述によって順に説明してゆく文章形式で、代表とされているのは「伊勢物語」(950年頃成立)である。使われている文字は変体仮名というか万葉仮名の草書体といったもので、すこぶる読みにくい。詳細は下記[参考サイト]の空色部分をクリックして頂きたい。
E-Mail:

鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

[参考文献]
  • 松岡 喬:「「首塚」の碑と野村 靖」『鵠沼』第88号
[参考サイト]
  • 鵠沼を語る会:鵠沼地区のモニュメント一覧「首塚の碑
 
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