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第0079話 近世の風水害

堀川改修記念碑

 引地川の作橋下流右岸、鵠沼海岸四丁目の北端あたりに小さな石碑がある。文面は、

  相模國高座郡鵠沼邑有川流稱堀川其
  西南之田呼藤原天明六年丙午秋七月
  十有七日水破堤防而田地悉荒矣子祖
  父誘勵邑人新築堤防享u三年辛辰夏
  五月十有九日又有水患而破堤二處厳
  父継祖父之志獨不顧費用買隣邑之土
  而又新築堤防百餘歩以為持久之計建
  水神祠永全是祈文化五年歳在戊辰秋
  八月望 淺塲太郎左衛門 建之
            谿南時篤書

 1786(天明6)年7月17日の洪水に祖父が、1803(享和3)年5月19日の洪水に父が堀川(引地川)の堤防を建設して復旧したことを記念し浅場太郎左衛門が建碑した碑を再建したものである。
※享u三年は享和三年のことで、辛辰とあるは癸亥の誤り

 堀川とは引地川最下流部の呼称で、少し上流の東海道線鉄橋付近は清水川と呼ばれていた。
 鵠沼は引地川と片瀬川(境川下流部)が地域の両側を流れており、平坦な砂丘地帯であるため、自由蛇行を繰り返し、出水のたびに河道がつけ変わるほどであった。水害は日常茶飯事と言えるほどだったに違いない。
 鵠沼村では各寺院の過去帳などを除き、まとまった古文書は極めて少ない。周辺の藤澤宿や遊行寺には膨大な古文書が遺されているし、羽鳥村の名主、三觜家の文書は藤沢市文書館が保管している。
 従って、この石碑の存在は鵠沼村内における具体的な水害の記録として貴重なものである。
 下の年表は、鵠沼を語る会の久保尚雄氏が、周辺地域の古文書などを調査し、会誌『鵠沼』の第22号に「災害(天災)略年表」としてまとめたもののうち、江戸時代のものを抽出し、他史料の情報を加えて整理したものである。
江戸時代の風水害年表    
西暦 和暦 記                        事
1605 慶長10     この年関東諸国大風水害、大凶作となる
1642 寛永19 3   〜7月飢饉あり、羽鳥村では30石弱の荒地高となる
1684 貞享 1     引地川水害。羽鳥村の水損畑3町1反余
1699 元禄12     大風長雨のため飢饉
1702 元禄15     飢饉。(この年の羽鳥村の飢人 113人)
1708 宝永 5 10 12 富士山宝永噴火の堆砂で境川河床上昇
1721 享保 6     引地川大洪水
1732 享保17     飢饉で羽鳥村で146人の飢人が出る、(享保飢饉=蝗の大発生)
1734 享保19     引地川洪水で田は例年の 20〜30損耗
1766 明和 3     関東大洪水、境川の氾濫で藤沢宿大被害
1768 明和 5 9   引地川水害
1770 明和 7     関東大旱魃
1780 安永 9     境川水害、藤沢宿被害
1781 天明 1     境川水害、藤沢宿被害
1783 天明 3 7   浅間山大噴火、藤沢宿でも飢饉深刻 (天明大飢饉)
1786 天明 6 7 17 引地川・境川氾濫、大鋸橋流失、本願寺倒壊→浅場家による引地川築堤工事
1786 天明 6 11 11 境川氾濫により、勘定所役人・普請役人が初見聞を実施
1787 天明 7     飢饉
1803 享和 3 5 19 引地川、鵠沼村2か所で破堤・境川水害、藤沢宿被害→浅場家による引地川築堤工事
1804 文化 1 6   田植日照続き
1807 文化 4     水不足
1808 文化 5 8 15 浅場太郎左衛門、堀川改修記念碑創建
1816 文化13     風損
1823 文政 6     塩風大風害、倒壊被害
1829 文政12     境川水害、藤沢宿被害
1833 天保 4 5   田植時冷雨 8月大風雨
1836 天保 7     関東・東北大飢饉 天保の飢饉
1846 弘化 3 6   大雨により境川氾濫、被害大
1849 嘉永 2     旱魃・大雨・冷害続く 市域内にも被害及ぶ
1852 嘉永 5     旱魃・大雨・冷害続く 市域内も農作物の被害著し
1856 安政 3 8 25 関東地方大暴風雨、田畑に塩害
1857 安政 4     水害冷害発生
1859 安政 6     大水害。藤沢地域で床上浸水多数
1860 万延 1 8 16 大風によリ田畑被害、川名村水害
1864 元治 1     大暴風のため空乗寺本堂倒壊
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鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

 [引用・参考文献]
  • 久保 尚雄:「災害(天災)略年表」『鵠沼』第22号(1984)
  • 角谷ひとみ・井上公夫:「富士山宝永噴火(1707)後の土砂災害」『歴史地震』第18号(2002)
 
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