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第0264話 江ノ電新線計画

 今回は鵠沼を巡り損なった話題を。

夢の中で走った江ノ電

 『鵠沼』第83号(2001)に青木 悠会員が「夢の中で走った江ノ電」と題する報告を寄せられている。
 この計画については、既に第0208話で簡単に紹介したが、再度この問題に絞ってまとめておこう。
 大正から昭和(1920 ~ 1930 ごろ)にかけて京浜―湘南間にまき起こった鉄道建設ブームの中で「江ノ電」も又、自ら江の島(片瀬〕を中心に新しい路線計画を持っていた。
(1) 茅ヶ崎・辻堂・鵠沼線。この計画は、1922(大正11)年12月 22日、 江ノ電の前身だった「東海土地電気株式会杜」名義で出願・認可されたもので、勿論、電気鉄道である。計画路線は、大船―鵠沼―辻堂―茅ケ崎に及ぶものであり、一部着工もしていたが、このうち次の二線部分が具体的に記録に残っている。 茅ケ崎町―藤沢町鵠沼(海岸)4.61マイル(7.42km)藤沢町辻堂―辻堂海岸0.77マイル(1.24km) この二線の建設費は50万円だった。
 当時別荘地として急速に発展していた鵠沼地帯と辻堂地区を江の島・鎌倉と結ぴさらに京浜間との交通の便を計ると共に、自らも土地開発を行っていくという趣旨のものだった。しかし翌1923(大正12)年.9月1日の関東大震災のため、この鉄道敷設事業は大打撃を受け、その余波を受けた「昭和恐慌」と呼ぽれる大不況のため、多くの銀行が休業し失業者が増えていった。「東海土地電気」は、この時辻堂停車場の敷地まで買収していたが、度重なる工事延期願いのため、1930(昭和5)年に免許取消になり、立消えてしまった。
(2)江の島(片瀬)―大船線。この計画は、当初江ノ島電気鉄道㈱創立総会に先立って1926(大正15)年7月17日付で申請が出された鉄道延長敷設免許再申請「鵠沼~大船」が、同年11月26日に鎌倉郡川口村より小坂村に至る延長7.02km鉄道敷設免許に変更申請され、12月10日に認可されたものである。翌年、4月には用地買収が進められたが、江ノ電経営にも関わっていた菅原通済が、鎌倉山住宅地の開発のために日本自動車道を設立申請事業免許取得、この日本自動車道が日本最初の自動車専用道路として1930(昭和5)年、7月15日、大船-片瀬間を開通させ、10日後には大船駅-江ノ島口、大仏前-鎌倉山間乗合自動車を開業させた。菅原通済は1933(昭和8)年、新大船-江ノ島間の鉄道敷設権を江ノ島電気鉄道㈱より譲受したが、翌年新大船-江ノ島間の鉄道起業は免許失効により廃止された。
 この自動車専用道路路線は後に京浜急行に引き継がれ、1970(昭和45)年3月7日:湘南モノレール線、大船-西鎌倉間が開業(鎌倉山付近を除き本路線上空に軌道を構築)、翌年7月1日に西鎌倉-湘南江の島間全線開通するのである。
江ノ電新線計画関係年表
西暦 和暦 記                  事
1922 大正11 12 22 東海土地電気㈱による茅ヶ崎・辻堂・鵠沼線、出願・認可
1923 大正12 9 1 関東大震災のため鉄道敷設事業は大打撃を受ける
1926 大正15 7 17 江ノ電、鉄道延長敷設免許再申請「鵠沼~大船」
1926 大正15 7 19 江ノ島電気鉄道㈱創立総会。資本金:100万円
1926 大正15 11 15 菅原通済、日本自動車道を設立申請事業免許取得
1926 大正15 11 26 江ノ島電気鉄道㈱による鎌倉郡川口村より小坂村に至る延長7.02km鉄道敷設免許変更申請
1926 大正15 11 28 小田原急行鉄道、片瀬海岸方面への延長計画を申請
1926 大正15 12 10 江ノ島電気鉄道㈱による鎌倉郡川口村より小坂村に至る延長7.02km鉄道敷設免許認可
1927 昭和 2 4 2 江ノ島電気鉄道㈱による江の島口より新大船に至る延長7.02km鉄道用地買収
1927 昭和 2 7 川口村片瀬より片瀬川を横断して西浜へ向かい循環する全長880尺(約300m)の遊覧懸垂電車(ロープウェイ)計画があり、仮設免許が出たが実現困難で見送られた
1927 昭和 2 12 27 小田原急行鉄道、片瀬海岸方面への延長計画免許認可
1928 昭和 3 7 1 東京電燈㈱江之島電気鉄道部、江ノ島電気鉄道として営業運転開始
1929 昭和 4 2 13 小田原急行鉄道江ノ島線、着工
1929 昭和 4 3 1 江ノ電片瀬駅、江ノ島駅に改称
1929 昭和 4 4 1 小田原急行鉄道江ノ島線、開業(約6か月(4/1~ 9/30)間の夏場だけの条件付き)
1929 昭和 4 6 29 江ノ電江ノ島駅から分岐し、桟橋付近までの支線《江ノ島口線》延長申請
1929 昭和 4 9 16 小田原急行鉄道、江ノ島電気鉄道との運輸協同契約認可
1930 昭和 5 東海土地電気㈱による茅ヶ崎・辻堂・鵠沼線免許取消
1930 昭和 5 7 15 日本自動車道が日本最初の自動車専用道路として大船-片瀬間を開通させる
1930 昭和 5 7 25 大船駅-江ノ島口、大仏前-鎌倉山間乗合自動車開業
1933 昭和 8 菅原通済、新大船-江ノ島間の鉄道敷設権を江ノ島電気鉄道㈱より譲受
1934 昭和 9 新大船-江ノ島間の鉄道起業を廃止(免許失効)
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鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

[参考文献]
  • 青木 悠:「夢の中で走った江ノ電」『鵠沼』第83号(2001)
 
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