HOME 政治・軍事 経済・産業 自然・災害 文化・芸術 教育・宗教 社会・開発


第0184話 鵠沼文化人百選 その007 和辻哲郎・照夫妻

プロフィール

 和辻哲郎(わつじ てつろう 1889(明治22)年3月1日-1960(昭和35)年12月26日) 哲学者・倫理学者
 医家の次男として生まれる。姫路中学校を経て、第一高等学校へ入学。その後、東京帝國大學文科大學哲學科へ入学。卒業後は外遊し、哲学者ハイデガーに師事。帰国後東洋大学の教壇に立つ。はじめは西洋哲学を研究していたが、次第に日本の古美術や古代文化への関心が高まる。さらに、1925(大正14)年京都帝国大学文学部の倫理学講座に呼ばれたのを機に、仏教倫理思想史、西洋の倫理学等の研究をはじめる。
 1934(昭和9)年に東京帝国大学文学部に就任し、1949年東大退官も日本倫理学会を創立(1950)するなど活躍し、文化勲章を受賞(1955)した。

鵠沼とのゆかり

 第0174話で紹介したように、1911(明治44)11月より後輩=髙瀬弥一の勧めで卒業論文執筆のために中藤ヶ谷の髙瀨邸に滞在。妹の髙瀬 照を見初めて結婚した。
 1915(大正4)年9月から1918(大正7)年3月まで髙瀨邸の離れに居住し、阿部次郎が同居した時期もある。隣家の安倍能成らの「例の会」に加わり、谷崎潤一郎・芥川龍之介・與謝野晶子ら文人との交流もあった。
 髙瀬邸が川袋に移った後も、時折鵠沼を訪れている。

和辻哲郎 鵠沼関係年譜
    
西暦 和暦 記                        事
1911 明治44 11   ~1912.3、和辻哲郎(18891-1960)、卒業論文執筆のために中藤ヶ谷の高瀬邸に滞在
1911 明治44 12 23 小説家=谷崎潤一郎、東屋から和辻哲郎宛に来訪を慫慂する手紙を使者に持参させる
1912 明治45 2 13 小説家=谷崎潤一郎、「鴻の巣」で萱野二十一(郡虎彦)と連署で鵠沼の和辻宛葉書
1912 明治45 6 27 哲学者=和辻哲郎(1889-1960)、高瀬 照と京都平安神宮で結婚→東京馬込に新居を構える
1915 大正 4 9   哲学者=和辻哲郎・照夫妻、照の実家の現鵠沼藤が谷の高瀬邸内に移住
1915 大正 4 9   阿部次郎、単身で鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅に滞在
1916 大正 5 3 20 ~21、阿部次郎、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅を訪問
1916 大正 5 5 2 ~5/20、哲学者・評論家=阿部次郎、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅に滞在
1916 大正 5 5 20 独文学者=小宮豊隆(1884~1966)、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎・安倍能成宅を訪問
1916 大正 5 7 26 阿部次郎、箱根で岩波茂雄と面会の帰途和辻哲郎宅に立ち寄り1泊
1916 大正 5 8 14 ~15、阿部次郎、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅を訪問。安倍能成宅で夕食、小宮豊隆らと交流
1917 大正 6 1 10 ~17、阿部次郎、中藤ヶ谷和辻哲郎宅に7日間滞在
1917 大正 6 1 22 ~23、中藤ヶ谷安倍能成宅で「例の会」。阿部次郎・小宮豊隆・森田草平・和辻哲郎が集う
1917 大正 6 4 21 ~22、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅で「例の会」。雑誌『思潮(岩波)』同人結成について協議
1917 大正 6 5 31 谷崎潤一郎・芥川龍之介、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅を訪問
1917 大正 6 7 1 ~2、阿部次郎、中藤ヶ谷和辻哲郎宅に1泊。翌日安倍能成宅に寄り岩波茂雄と交流
1917 大正 6 11 11 ~12、鵠沼中藤ヶ谷和辻哲郎宅で「例の会」。阿部次郎ら集う
1917 大正 6 11 23 三渓園で原善一郎の結婚披露。和辻哲郎、阿部次郎、安倍能成、芥川龍之介、矢代幸雄ら出席
1918 大正 7 1 26 ~27、中藤ヶ谷安倍能成宅で「例の会」。阿部次郎・小宮豊隆・和辻哲郎が集う
1918 大正 7 3 28 阿部次郎、中藤ヶ谷和辻哲郎宅を訪問
1918 大正 7 6 7 和辻哲郎・照夫妻、藤ヶ谷高瀬邸内より東京へ転居。阿部次郎も和辻哲郎宅を去る
1924 大正13 7 和辻哲郎・照夫妻、子どもたちを連れて川袋高瀬家に2泊する
1927 昭和 2 1 18 ~20、和辻哲郎、高瀬家に泊まる
1927 昭和 2 12 26 ~1928/1.7、和辻哲郎、一家で鵠沼で越年(高瀬邸?)
1960 昭和35 12 26 和辻哲郎、心筋梗塞のため東京都練馬区南町の自宅で没。享年71。
1966 昭和41     和辻照:『和辻哲郎とともに』新潮社、刊行
1968 昭和43 10   和辻照:『和辻哲郎の思ひ出』岩波書店、刊行
1968 昭和43     和辻照:『七十八の賀』和辻照、刊行
1977 昭和52 5   和辻哲郎:『妻和辻照への手紙』講談社学術文庫、刊行
1977 昭和52 6   和辻照、没
1978 昭和53 6   和辻夏彦:『残照―和辻照遺稿集』和辻夏彦、刊行
1979 昭和54 6   和辻照:『同行二人―歌集』和辻夏彦、刊行
1987 昭和62 10   中央公論社、中公文庫として勝部真長『青春の和辻哲郎』を刊行
1995 平成 7 4   PHP研究所、PHP文庫として勝部真長『若き日の和辻哲郎』を刊行
E-Mail:

鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

[参考文献]
  • 和辻 照:『和辻哲郎とともに 』(1966)
 
BACK TOP NEXT