公開型保管施設こそが博物館の本来の姿である
 藤沢市では2001(平成13)年3月に策定した「ふじさわ総合計画2020」実施計画で博物館の語を「公開型保管施設」と読み替えることによ
って事態を乗り切ろうという姑息な(失礼!)手段により、この段階では2006(平成18)年の完成を目指していました。
 この読み替えは、できあがった時に「こんなものが博物館なのかよ」という批判を乗り切るための苦肉の策と読み取れます。
 私は、この読み替えは不必要だと思いますし、藤沢市教育委員会が2020年まで法律違反の犯罪者であり続けることを憂います。
 博物館の定義は、博物館法の第2条に明記されています。
第2条  この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、
展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせて
これらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法 (昭和25年法律第118号)による図
書館を除く。)のうち、地方公共団体、民法 (明治29年法律第89号)第34条の法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人(独立行政
法人(独立行政法人通則法 (平成11年法律第103号)第2条第1項 に規定する独立行政法人をいう。第29条において同じ。)を除く。)が
設置するもので第2章 の規定による登録を受けたものをいう。

 すなわち、まず「資料を収集し、保管し」があり、次に「展示」があり、さらに「教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業」
と続きます。一般の利用者からは、展示が第一と見られがちですが、展示スペースの5〜6倍の保管スペースが必要なのが博物館です。
 それよりも、「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する」とあるのに、1987年に出された人文分野を中核とした博物館という答申に固執
するあまり、芸術、産業、自然科学等の分野がないがしろにされていることが問題だと思います。
 この答申が出された段階では、湘南台文化センター開設プロジェクトがスタートし、プラネタリウム設置が検討されていました。自然科学系の
学芸員が考慮されていました。委員会答申は芸術・自然科学系は後回しにしても、とりあえず人文系博物館を優先すべきとの方向が出された
ものと思います。答申の文面に接していませんが、芸術・自然科学系は不必要ということではないと考えられます。
 下に藤沢の社会教育施設(民間を含む)の歩みを略年表にまとめました。
西暦 和暦 記            事
1869 明治 2     コッキング、江の島山頂にコッキング屋敷を建設
1870 明治 3     本陣・脇本陣を廃止。堀内部之助、「藤沢郷学所済美館」を設立。
1874 明治 7     臨海学舎(→片瀬小学校)開設。エドワード・S・モース、江の島に臨海実験所を設営
1882 明治15     サムエル・コッキングが江の島に植物園の設立を開始
1885 明治18     サムエル・コッキングの熱帯植物園、完成
1900 明治33 6   江の島(島内、参道入口左側)に江ノ島水族館が設立される(1902.8説も)
1901 明治34 8   画家=河合玉堂(1873-1957)、対江館に来遊。『清風涼波』のスケッチを残す=藤沢市に美術館ができればほしい
1925 大正14     江の島(島内、参道入口左側)の江ノ島水族館、復旧再開(1931年の写真はあるがいつまであったか不詳)
1934 昭和 9 4   江の島で海底透視船が営業開始する
1940 昭和15 7 1 神奈川県、鵠沼図書館(第三尋常小学校内)に貸出文庫を設置(第1期設置県内4か所の1つ)
1940 昭和15 10 1 藤沢市制施行藤沢市になる。戸数6,357戸、人□32,479人。初代市長に大野守衛就任
1943 昭和18 1 5 藤沢文化協会(大政翼賛会の外郭団体)創立
1943 昭和18 5 5 日本大学農学部、藤沢市亀井野に新校舎開設
1943 昭和18     日本精工敷地内から弥生式土器の完形品が発掘される
1945 昭和20 8 19 林 達夫ら、本鵠沼金田邸と鵠沼海岸駅前に文化人の書籍提供を受け貸本屋「湘南文庫」開設※終戦直前?
1946 昭和21 7 21 林 達夫・長谷川巳之吉ら、湘南学園の夏期休暇を利用し、市民向け教養講座「鵠沼夏期自由大学」を開催
1946 昭和21     鵠沼海岸に「なぎさクラブ」(文化活動の交流会)結成(1948年まで)
1947 昭和22 4 1 鎌倉郡片瀬町、藤沢市に編入合併
1948 昭和23 4 1 県立湘南中学校、新制の県立湘南高等学校として、市立藤沢高女、市立藤沢高等学校として再発足
1948 昭和23 7 1 市立図書館開館
1949 昭和24 12   藤沢市がコッキングの庭園跡地を整備し、「江の島熱帯植物園」として公開
1950 昭和25 3 25 読売玉川園の落下傘塔を移設し、江の島平和塔落成
1950 昭和25     江の島熱帯植物園、江ノ島鎌倉観光(後の江ノ島電鉄)の委託経営となり、「江の島植物園」と改名
1951 昭和26 5 16 第1回藤沢市展を市役所で開催
1951 昭和26 11 3 旧市庁舎に藤沢公民館開館
1952 昭和27 7 19 日活社長の堀久作、轄]ノ島水族館を設立
1952 昭和27 11   市教育委員会発足
1954 昭和29 7 1 轄]ノ島水族館、江の島水族館(1号館)を国道134号沿いの片瀬江ノ島駅寄りの内陸側に開業
1955 昭和30 10 22 秩父宮記念体育館開館
1955 昭和30 12 2 江の島水族館が「博物館相当施設」に指定される。(文部省告示第108号)。日本・神奈川県博物館協会加盟施設
1957 昭和32 5 3 江の島マリンランド営業開始
1959 昭和34 2 14 鵠沼公民館落成式挙行
1959 昭和34 3 27 藤沢市公民館条例制定
1959 昭和34 11 29 秩父宮記念体育館にて第1回市民音楽祭開催
1962 昭和37 4   藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町の2市1町、共通する都市課題を解決を目的に湘南広域都市行政協議会を組織
1964 昭和39 5 25 江の島海獣動物園開設
1964 昭和39 10   藤沢公民館、改築
1966 昭和41 8   村岡公民館、開設
1967 昭和42 4 1 江の島マリンランドが博物館相当施設に指定される
1968 昭和43 9 25 藤沢市民会館、開館式典挙行
1968 昭和43 10 1 藤沢市民会館、正式開館
1969 昭和44 7   公民館条例改定、運営審議会委員設置
1969 昭和44 10 31 鵠沼公民館、第22回優良公民館として文部大臣表彰
1970 昭和45     江島神社奉安殿開設。神奈川県博物館協会加盟施設
1971 昭和46 4 1 県立辻堂海浜公園、開園。交通展示館設置
1971 昭和46 11 19 藤沢駅南側にフジサワ名店ビル、開業。6階にギャラリー
1972 昭和47 12 11 市庁舎内に市民資料室完成
1974 昭和49 7 1 藤沢市文書館開館※市町村立としては全国初
1974 昭和49     日本大学農獣医学部、標本模型委員会を設置。旧農学部、旧東京獣医畜産大学が所有している標本を集める
1976 昭和51 10 1 蒸気機関車C11245号、国鉄から藤沢市ヘナンバープレートの授受が行われ、鵠沼運動公園に保存
1976 昭和51 10   六会・片瀬・明治・長後・御所見・遠藤各公民館、設立(市民センターに併設)
1977 昭和52 4 30 遊行寺宝物館、遊行寺什物の保管施設として開館。神奈川県博物館協会加盟施設
1978 昭和53 1   辻堂公民館、設立(市民センターに併設)
1978 昭和53     日本大学農獣医学部標本模型委員会、藤沢校舎に資料室を設置
1979 昭和54 11   善行公民館、設立(市民センターに併設)
1981 昭和56 3   旧近藤邸、辻堂から藤沢市民会館の前庭に移築
1983 昭和58     柄沢の旧名主小池邸、新林公園内へ移築復原→市重文
1984 昭和59 10 6 秋葉台文化体育館が完成する
1985 昭和60 3 1 藤沢駅南口の江ノ電百貨店が小田急百貨店として開店。6階に展示場
1985 昭和60 4 14 江の島北緑地にエドワード・S・モースを記念する「日本近代動物学発祥の地記念碑」を設立
1985 昭和60 12   湘南大庭公民館、設立(市民センターに併設)
1986 昭和61 10 25 湘南台に総合市民図書館が完成する→中央図書館は藤沢南市民図書館と改称
1986 昭和61     大鋸3-1-11に福本和夫氏のコレクションをを展示する『福本ふくろうコレクション展示館』開設
1987 昭和62 1 30 藤沢ルミネプラザ落成式。2月、6階に市民ギャラリー開設
1987 昭和62  5   生涯学習部内に博物館建設準備担当を設置。日本・神奈川県博物館協会加盟
1989 平成 1 4   長久保都市緑化植物園開設
1989 平成 1 7 18 湘南台文化センター(公民館、市民シアター、こども館複合施設)が開設される。神奈川県博物館協会加盟施設
1990 平成 2 9   済美館(藤沢公民館分館)、設立
1990 平成 2 10   長後に羽根澤屋資料館落成
1990 平成 2     日本大学農獣医学部藤沢校舎資料室、神奈川県教委から博物館相当施設としての指定を受け、資料館として開館
1992 平成 4 4 11 藤沢産業センターが開設される
1992 平成 4 10 1 藤沢ケーブルテレビ、開局
1993 平成 5 3   辻堂市民図書館、開館
1993 平成 5 9   大庭市民センター隣接地、博物館の建設用地に予定
1994 平成 6 3 20 江の島水族館の外装リニューアル
1996 平成 8 4 1 日本大学農獣医学部、日本大学生物資源科学部と改称
1996 平成 8 4 28 地域FM局、レディオ湘南、開局
1997 平成 9 4   市教委機構改革。社会教育課→生涯学習課
1997 平成 9 4   片瀬しおさいセンター(片瀬公民館分館)、設立
1998 平成10 4   藤沢市学習文化センター開設
1999 平成11 6   生涯学習ふじさわプラン制定
2000 平成12 4 29 湘南大庭市民図書館、開館
2000 平成12 10   江の島参道に「片岡鶴太郎美術館」オープン
2002 平成14 3 31 新水族館建設工事のため、海の動物園を閉鎖
2002 平成14 10 19 藤沢市生涯学習大学かわせみ学園、レディオ湘南で開講
2003 平成15  4 29 江の島植物園、江の島サムエル・コッキング苑としてオープン。
2003 平成15 5 5 江の島の「片岡鶴太郎美術館」閉館
2003 平成15 5   博物館建設準備担当、「電子博物館みゆネットふじさわ」を開設
2003 平成15 6   「公民館の設置及び運営に関する基準」が全部改正
2003 平成15 8 31 新水族館建設工事のため、マリンランド、フィナーレ
2003 平成15 10   生涯学習大学かわせみ学園、開講
2003 平成15 12   「鵠沼郷土資料展示室」、正式オープン
2004 平成16 1 12 新水族館建設工事のため、江の島水族館、フィナーレ
2004 平成16 4 16 新江ノ島水族館グランドオープン。なぎさの体験学習館を併設。日本・神奈川県博物館協会加盟施設
2004 平成16     石井三郎、辻堂元町2-10-51に『辻堂茂兵衛資料館』を開館
2005 平成17 4   日本大学生物資源科学部資料館、博物館として規模を広げ開館。神奈川県博物館協会加盟施設
2005 平成17 6   公民館条例改定(有料化)
2005 平成17 12   「生涯学習ふじさわプラン」見直し
2006 平成18 2 15 県立藤沢高校の跡地活用について、熊坂氏を中心に卒業生らが「藤沢文化創造の丘をすすめる会」発足
2006 平成18     藤沢630-1の老舗米穀店を利用して『蔵まえギャラリー』開設
2007 平成19 3 28 明治市民センター内に明治郷土史料室を開設
2007 平成19 4 1 藤沢市公民館条例一部改訂施行
2008 平成20 2 1 旧後藤医院(藤沢市鵠沼橘1丁目)、「鵠沼橘市民の家」としてオープン
2009 平成21 4 1 市指定文化財「旧福原家長屋門」の新林公園(藤沢市川名)への移築復元工事が終わり、一般公開
2010 平成22 9 10 鵠沼橘の旧後藤医院鵠沼分院、国登録有形文化財に登録
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