万が一「ハコモノ」がなくても、学芸員だけは絶対に必要である
 学校の教諭、病院の医師と同様、博物館における専門職は学芸員です。 
 ところが日本では、学芸員という専門職について、正確に認識されていないようです。諸外国においては、学芸員は大学教授と同等あるい
はそれ以上の権威を認められていると聞き及びます。日本ではそれほどでもないためか、一部国立博物館では、学芸員の他に博物館教授
なる職種を設けているほどです。
 私は、20世紀の後半を高校教諭という肩書きで過ごして参りましたが、当時の高校現場では教諭は学士が大半で、修士は少数派、博士
は例外的存在でした。しっかりした博物館の学芸員は、学士が少数派で、残りは修士と博士が半々というところだそうです。
 ですから、日本においては博士が大多数の病院の医師や大学教授と、学士に修士が混じる高校教諭との中間ぐらいといえましょう。
 「学芸員は標本資料の文化・学術的価値を見抜くためにも、科学的知識として一般に流布している通説や俗説の真偽を見極める為にも、常
に学術研究に励んで科学的判断能力を高める必要があります。すなわち学芸員は、日常的に研究活動を進めるなかで科学的な判断能力と
感性を高めつつ、その研究の過程で多くの資試料を収集し、登録・保管をするとともに、研究成果を常設展示の更新や企画展示、普及講演、
普及行事などで一般市民に公表することにより、科学の進歩と成果の現状を普及して、市民の文化的・知的要求に応えることを職務とする、
研究者であると同時に社会教育者であるということができる」という趣旨のに接したことがあります。
 例えば、ある森林が宅地造成で切り払われようとしたとき、その森林の生態学的な価値を見極め、その森林にしか生息しないような希少な
動植物が存在するか否かを見極め、開発に許可を与える当局に自治体内部から客観的に示唆を与える責任も持つべきです。
 こういう場合、臨時に大学教授などに依頼して環境アセスメントが行われることが多いようですが、日常的に市内全体をフィールドとして調査
研究をしている学芸員がいたら、より正確な結果が得られるでしょう。
 博物館の建設などというと、「ハコモノ行政」の標本のように思われ、揶揄されることが多いようです。重要なのは容れ物より中身です。もし、
建物の建設が遅れても、学芸員だけは絶対に必要であると思います。
 未完成ですが、博物館建設準備担当の少数の、分野が偏った学芸員の仕事を年表にしてみました。
西暦 和暦 記            事
1940 昭和15 10 1 藤沢市制施行。藤沢市になる
1972 昭和47 10   藤沢市文化財展示会(市民会館)
1972 昭和47 12 11 市庁舎内に市民資料室完成
1981 昭和56     高橋良氏(耳鼻科医、鵠沼海岸)、世界各地の考古資料コレクションを藤沢市に寄贈
1981 昭和56  17 〜21、市民ギャラリーにて「呉コレクション江の島浮世絵展」開催
1983 昭和58 10 1 市史普及版『藤沢―わがまちのあゆみ―』刊
1983 昭和58     柄沢の旧名主小池邸、新林公園内へ移築復原→市重文
1984 昭和59 5   「藤沢市立博物館(資料館)早期建設についての陳情」が出される
1984 昭和59 6   「藤沢市立博物館(資料館)早期建設についての陳情」、文教常任委員会で趣旨了承
1984 昭和59 10  24 〜11/4、「藤沢の文化財」展(於:市民ギャラリー)
1985 昭和60 11   藤沢市社会教育委員会議より、藤沢市にふさわしい博物館の基本構想について、人文系総合博物館として建議
1986 昭和61     藤沢市博物館基本構想委員会,、『藤沢にふさわしい博物館の在り方 (仮称)』
1986 昭和61 10 29 〜11/3、藤沢文化財展「庶民の祈り」(於:市民ギャラリー)
1987 昭和62 1 30 藤沢ルミネプラザ落成式。2月、6階に市民ギャラリー開設
1987 昭和62 3   藤沢市博物館基本構想委員会、藤沢市にふさわしい博物館のあり方として、人文分野を中核とした博物館を報告
1987 昭和62 5   生涯学習部内に博物館建設準備担当を設置。日本および神奈川県博物館協会に加盟
1987 昭和62 9  9 〜20、「江の島浮世絵展」(於:市民ギャラリー)
1988 昭和63 3 31 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録I アメリカ大陸』を刊行(頒布価格 500円)
1989 平成 1 3 31 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録II エジプト』を刊行(頒布価格 500円)
1989 平成 1 9 30 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録III 地中海』を刊行(頒布価格 500円)
1990 平成 2 3 31 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録IV 西アジア・ヨーロッパ』を刊行(頒布価格 500円)
1990 平成 2 5   藤沢市博物館展示基本構想委員会、「博物館の展示のあり方」を報告
1991 平成 3 3 31 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録V 南・東南アジア』を刊行(頒布価格 500円)
1991 平成 3 3 31 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録VI 東アジア』を刊行(頒布価格 500円)
1992 平成 4 3 1 博物館建設準備担当、『高橋コレクション総目録VII 図書・索引』を刊行(頒布価格 500円)
1992 平成 4 12   藤沢市博物館資料収集調査委員会、「仮称藤沢市博物館の調査研究、資料収集、整理保管のあり方」を報告
1993 平成 5 3 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第1集『藤沢の民家』を刊行(残部なし)
1993 平成 5 9   大庭市民センター隣接地、博物館の建設用地に予定
1993 平成 5     博物館建設準備担当、リーフレット『江の島みやげ』を刊行
1995 平成 7 3 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第2集『江の島の民俗』を刊行(頒布価格 3,500円)
1996 平成 8 2 6 博物館建設準備担当、リーフレット『時衆の美術と文芸-中世の遊行聖と藤沢-』を刊行(残部なし)
1997 平成 9 1 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第3集『神奈川の古代道』を刊行(残部なし)
1997 平成 9 2 20 博物館建設準備担当、リーフレット『湘南大庭の遺跡』を刊行(残部なし)
1997 平成 9 3 4 博物館建設準備担当、リーフレット『藤沢・神奈川の古代文字』を刊行(残部なし)
1998 平成10 2 20 博物館建設準備担当、リーフレット『片瀬・村岡南の遺跡』を刊行(残部なし)
1998 平成10 3 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第4集『大庭御厨の景観』を刊行(残部なし)
1998 平成10 4   故服部清道氏の遺族、歴史資料を中心として、おおよそ4万1,000点の資料を市に寄贈
1998 平成10 11 3 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.1を刊行
1998 平成10     博物館建設準備担当、「古文書を見る −藤沢の中世文書を中心にー」史料集 古文書を読むを刊行
1998 平成10 11 3 博物館建設準備担当、リーフレット『古文書を見る-藤沢の中世文書を中心に-』を刊行(残部なし)
1999 平成11 3 20 博物館建設準備担当、リーフレット『長後・湘南台の遺跡』を刊行(残部なし)
1999 平成11 3 29 博物館建設準備調査報告書 ; 第5集『FUJISAWA 1945-1959-アメリカ軍の見た藤沢-』を刊行(残部なし)
1999 平成11 11 2 博物館建設準備担当、リーフレット『絵葉書に見る江の島今昔』を刊行(残部なし)
1999 平成11 11 8 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.2を刊行
2000 平成12 3 15 博物館建設準備担当、リーフレット『村岡北・藤沢の遺跡』を刊行(残部なし)
2000 平成12 3 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第6集『市民が語る十五年戦争』を刊行(頒布価格 2,000円)
2000 平成12 11 7 市教育委員会、リーフレット『江の島縁起絵巻』を刊行(残部なし)
2001 平成13 1 15 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.3を刊行
2001 平成13 1 30 〜2/18、第1回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2001 平成13 2 24 博物館建設準備担当、リーフレット『善行の遺跡』を刊行(残部なし)
2001 平成13 3 31 博物館建設準備調査報告書 ; 第7集『民家解体保存調査報告書その一』を刊行(頒布価格 1,500円)
2001 平成13 6 26 博物館建設準備担当、リーフレット『一遍聖絵をたどる』を刊行(頒布価格 100円)
2001 平成13 11 12 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.4を刊行 
2001 平成13 11 13 博物館建設準備担当、リーフレット『東海道と藤沢宿』を刊行(頒布価格 200円)
2001 平成13 12 11 〜1/20、第1回藤沢市30日美術館 ふじさわ・今日の作家展(賛助:片岡球子、絹谷幸二、山本正道)入場者:4,247人
2002 平成14 3 3 市教育委員会、リーフレット『六会の遺跡』を刊行(残部あり)
2002 平成14 3 29 博物館建設準備調査報告書 ; 第8集『民家解体保存調査報告書その二』を刊行(頒布価格 1,500円)
2002 平成14 9 17 〜29、『華ひらいた鵠沼文化展―東屋・劉生・龍之介―』(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2002 平成14     生涯学習課、『生涯学習要覧 2003』を刊行
2003 平成15 1 21 〜2/9、第3回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2003 平成15 2 14 〜3/20、第2回藤沢市30日美術館 荒木 襄太郎展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2003 平成15 3 29 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.5を刊行 
2003 平成15 3 29 〜5/9、企画展「六会の遺跡」(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2003 平成15 3 31 博物館準備担当、『江の島岩本院の近世文書』を刊行(頒布価格 2,800円)
2003 平成15 5   博物館建設準備担当、「電子博物館みゆネットふじさわ」を開設
2003 平成15 8 16 深谷百合子(長谷川路可の次女・宇都宮市在住)ら遺族、長谷川路可の絵画作品22点を藤沢市に寄贈
2003 平成15 10 14 博物館建設準備担当、リーフレット『「江の島」から“湘南"へ』を刊行(頒布価格 200円)
2003 平成15 11 18 〜12/21、第3回藤沢市30日美術館 上田 臥牛展〜新しい日本画への挑戦〜(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2004 平成16 2 2 〜2/28、第4回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2004 平成16 2 20 博物館建設準備担当、リーフレット『御所見・遠藤の遺跡』を刊行(残部あり)
2004 平成16 3 2 〜28、企画展「御所見・遠藤の遺跡」(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2004 平成16 3 31 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.6を刊行 
2004 平成16 11 16 〜12/19、第4回藤沢市30日美術館 菅沼五郎展 〜造型の意思・彫刻の詩〜(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2005 平成17 2 1 〜2/27、第5回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2005 平成17 3 31 市教育委員会、『湘南の誕生』を刊行(頒布価格 1,800円)
2005 平成17 3 31 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.7を刊行
2005 平成17 5 12 黒崎義介画伯作品保存会、童画や日本画、デッサンなど1011点とスケッチブック98冊などを藤沢市に寄贈
2005 平成17 10 4 〜11/6、第5回藤沢市30日美術館 塚本茂展 〜油彩の輝きを謳う〜(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2006 平成18 2   〜3/11、第6回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2006 平成18 3 31 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.8を刊行
2006 平成18 9 5 〜10/1、「浮世絵展」(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2006 平成18 12 12 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.9を刊行
2007 平成19 1 23 〜2/25、第6回藤沢市30日美術館 藤沢と丸木位里・丸木俊展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2007 平成19 2 27 〜3/11、第7回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2008 平成20 1 4 〜2/10、第8回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2008 平成20 2 19 〜3/23、第7回藤沢市30日美術館 〜炎の中から〜クリスタルガラス各務 鑛三 展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2008 平成20 3 31 博物館建設準備担当、『大地に刻まれた藤沢の歴史T〜旧石器時代〜』を刊行(頒布価格 1,000円)
2008 平成20 3 31 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.10を刊行
2009 平成21 2 24 〜3/29、第8回藤沢市30日美術館 鉛筆画の異才 齋鹿 逸郎 抽象への憧れ(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2009 平成21 3 31 市教育委員会、『大地に刻まれた藤沢の歴史U〜縄文時代〜』を刊行(頒布価格 1,000円)
2009 平成21 3 31 博物館建設準備担当、博物館準備だより No.11を刊行
2009 平成21 4 1 市指定文化財「旧福原家長屋門」の新林公園(藤沢市川名)への移築復元工事が終わり、一般公開
2009 平成21 4   博物館建設準備担当、リーフレット『長屋門復原 〜むかしの渡内〜』を刊行
2009 平成21 4 7 〜5/2、パネル展「長屋門復元/むかしの渡内」藤沢市民ギャラリー常設展示場で開催
2009 平成21 11 17 〜12/20、第9回藤沢市30日美術館 堀口泰造展 青銅に秘められた大地への想い(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2010 平成22 1 12 〜2/21、第10回藤沢市遺跡調査速報展(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2010 平成22 3 2 〜4/25『高橋コレクション 動物園へようこそ』(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
2010 平成22 6 22 〜8/29、平成22年度企画展「思い出の藤沢-70年のアルバム-」(藤沢市民ギャラリー常設展示室)
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