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第0085話 鵠沼の地蔵尊像と弘法大師像

 鵠沼地区のことに江戸時代以前から集落が形成されていた「本村」と呼ばれる地区の路傍には、道祖神、庚申塔、馬頭観世音、地蔵尊、弘法大師像、各種供養塔などの石造物が見られる。
 それらのうち、地蔵尊像は弘法大師像と小堂内に併置されることがある。今回はこの両者について述べてみよう。

鵠沼の地蔵尊

 仏教の信仰対象である菩薩の一尊、地蔵菩薩のこと。サンスクリット語クシティ(大地)・ガルバ(胎内・子宮)を意訳して「地蔵」という。大地が全ての命を育む力を蔵するように、苦悩の人々を慈悲の心で包み込み、救う所から名付けられたとされる。一般的には「子供の守り神」として信じられており、よく赤い頭巾とよだれかけを着ける。道祖神と習合したため、日本全国の路傍で石像が数多く祀られた。時に6体を並べた「六地蔵」が見られるが、これは、仏教の六道輪廻の思想に基づき、六道のそれぞれを6種の地蔵が救うとする説から生まれたものである。鵠沼村では、大東町内会館の裏手に見られる他、本眞寺境内にもある。本項では、路傍のものを中心にし、寺院のものは省いてある。
  • 石上地蔵 現存最古の地蔵。石上の宮澤邸の庭先に道路を向いて立てられているもの。石上渡しの脇から移動
  • 石上稲荷神社境内 1655(承応 5)年のものは遺失し、現在は新しいものが再建された。
  • 大東町内会館裏の六地蔵 1670(寛文10)年8月16日造立
  • 原地蔵堂 立像丸彫り。厨子入り。69cm
  • 堀川地蔵堂 淺場家邸内。鵠沼で唯一の坐像丸彫
  • 浜道地蔵堂 鵠沼海岸7-4-17地先。1780(安永 9)年11月吉日。立像丸彫。110cm
  • 高根地蔵 鵠沼海岸7-19-12。1843(天保14)年2月4日。立像丸彫。38cm。第0045話参照
  • 小田急線一木通り踏切脇 1958(昭和33)年1月20日。立像丸彫。152cm。前年11月児童3名の交通事故の供養
  • 延命地蔵 鵠沼神明3-4(鵠沼墓地)。1986(昭和61)年11月21日 

鵠沼の弘法大師像

 前項で紹介した堀川の淺場太郎右衛門父子二代の発願になる「相模國準四國八十八箇所」のうち、鵠沼村内に置かれたものは次の9か所である。この他に法照寺境内には、もう1体の弘法大師像が小堂内に安置される。手前が第48番札所の大師像とされる。
 相模國準四國八十八箇所の概略は第0084話、詳細は相模国準四国八十八ヶ所を参照されたい。
  • 第七十九番 大東観音堂
  • 第六十三番 毘沙門堂
  • 第五番    原地蔵堂 地蔵立像と併置
  • 第二十五番 濱道堀川地蔵堂 地蔵立像と併置
  • 第五十六番 堀川大師堂 地蔵坐像と併置
  • 第四十一番 苅田稲荷社
  • 第四十七番 密嚴山遍照院普門寺大師堂
  • 第四十八番 善光山天龍院法照寺
  • 第八十八番 密嚴山遍照院普門寺本堂=結願札所
鵠沼地区地蔵尊・弘法大師像年表    
西暦 和暦 記                        事
1654 承応 4 5 石上の地蔵菩薩立像、造立(鵠沼最古の石仏。昔は石上の渡し場近くにあった)
1655 承応 5     石上稲荷神社境内の地蔵菩薩立像、造立(遺失)
1670 寛文10 8 16 本鵠沼2-4-36大東町内会館裏の地蔵菩薩立像(南無阿弥陀仏)、造立
1780 安永 9 11 鵠沼海岸7-4-17地先浜道地蔵堂の地蔵菩薩像(立像丸彫り)、造立
1820 文政 3 6 法照寺境内の第48番札所弘法大師石像(坐像丸彫)、造立
1820 文政 3 6 鵠沼海岸7-4-17地先浜道地蔵堂の第25番札所弘法大師像(坐像丸彫)、造立
1820 文政 3 6 浅場邸内の準四国八十八箇所霊場第56番札所弘法大師像(坐像丸彫)、造立
1820 文政 3     本鵠沼5-10-21苅田稲荷の第41番札所弘法大師像(坐像丸彫)、造立
1821 文政 4 3   浅場太郎右衛門、普門寺境内に大師石像と大師堂建立
1843 天保14 2 4 堀川山上新右衛門、鵠沼海岸7-19-12に地蔵尊立像・高根地蔵堂造立
1943 昭和18     日本精工拡張で東毘沙門堂準四国第63番大師像を鵠沼墓地熄シ家墓所に移動
1958 昭和33 1 20 鵠沼松が岡4-19-5小田急線一木通り踏切脇の地蔵菩薩立像、造立
1986 昭和61 11 21 鵠沼神明3-4(鵠沼墓地)の延命地蔵、造立
1995 平成 7     関根善之助、普門寺境内に大師堂建立、寄進
E-Mail:

鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

[参考文献]
  • 藤沢市教育委員会:『藤沢市文化財調査報告書』第15集(1980)
[参考サイト]
 
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