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第0083話 伊能忠敬測量隊

伊能忠敬測量隊

 1800(寛政12)年から1816(文化13)年まで、足かけ17年をかけて全国を測量し、日本国の歴史上はじめて国土の正確な姿を明らかにした『大日本沿海輿地全図』を完成させた伊能忠敬(いのう ただたか 1745-1818)をご存じだろう。
 忠敬は千葉県九十九里町に生まれ、18歳の時に家業は衰え危機的な状態だった酒造家伊能家の婿養子となる。彼は倹約を徹底すると共に、薪問屋を江戸に設けたり、米穀取り引きの仲買をして、約10年間で完全に経営を立て直した。1783年(38歳)の天明の大飢饉では、私財を擲って地域の窮民を救済する。こうした功績が幕府の知ることとなり、苗字・帯刀を許された。
 50歳を迎えた忠敬は、家業を全て長男に譲り、幼い頃から興味を持っていた天文学を本格的に勉強する為に江戸へ出、暦局で幕府天文方高橋至時(よしとき)の門下生となった。
 「地球の大きさを知りたい」、暦局の疑問を明確にするため、地図制作を理由に幕府から蝦夷地渡航の許可を得た忠敬は、1800(寛政12)年、私費で東日本の測量を行う。その功績が幕府を動かし、以後は幕府の事業として日本全国の測量を命じられた。1816(文化13)年に測量は終了したが、地図化への計算作業の途中、1818(文化15)年4月13日、忠敬は74歳で没した。没後、喪を秘して地図製作は続行され、1821(文政4)年、『大日本沿海輿地全図』が完成、三ヶ月後喪を公表した。

 伊能忠敬とその一行6人の測量隊は、1801(享和元)年4月22日(新暦6月2日)小雨の中、鵠沼村から辻堂村、小和田村、茅ヶ崎村、南郷、柳島村までの海岸線を測量している。
 第一次から第九次まで行われた測量のうち、本州東海岸を測量した第二次測量の第21日目にあたる。この時の測量では、同年6月4日(新暦7月14日)平塚宿から戸塚宿まで東海道筋を測量している。また、1803(享和3)年の第四次測量で2月28日(新暦4月19日)藤澤宿から大磯宿まで、1805(文化2)年の第五次測量でも2月28日(新暦3月28日)藤澤宿から大磯宿まで、1808(文化5)年の第六次測量でも1月27日(新暦2月23日)藤澤宿から小田原城下まで、1812(文化8)年の第八次測量でも11月27日(新暦1月11日)藤澤宿から小田原城下まで、1812(文化8)年の第八次測量でも11月27日(新暦1月11日)藤澤宿から田村(平塚市)まで、さらに1815(文化12)年の最後の第九次測量でも4月29日(新暦6月6日)藤澤宿から小田原城下まで測量したので、その折にも鵠沼村北辺を測量したであろう。
 最初の第二次測量の前日は小坪村(逗子市)の十郎右衛門方で恒星の天文測量で緯度を確認し、小坪村から鎌倉を測量し、江ノ島の夷屋吉右衛門に泊まった。藤沢市江の島1-4-16に現在も営業している割烹旅館「惠比壽屋」であろう。
 朝6時から、江ノ島海辺の測量開始、これから行く各村の役人が裃をつけて挨拶に来る。9時前には江ノ島の測量を終え、宿泊先で昼食。そして午前9時過ぎに鵠沼から初めて、辻堂、小和田、茅ヶ崎、南郷まで、この日予定した測量はすべて終えたのが午後2時である。それ以降は、茅ヶ崎村南郷(現茅ヶ崎市南湖)の宿「江戸屋八郎左衛門」でデータを整理し絵図の下絵を描き上げる作業をする。夕食をとって早く寝、早朝は日の出前に起きたのだ。海岸線測量は約10kmに5時間をかけている。1時間2km。この時に行った測量は、歩測ではなく、尺縄や鉄鎖尺を使っての測長と磁石を使っての北からの方位測定を組み合わせるという古典的な、しかし近代測量の道具を使って行った。こうした測量の結果制作された地図の鵠沼村付近が下図である。
伊能忠敬測量隊の鵠沼村周辺測量記録      
西暦 和暦 測量次 前日宿泊先 当日宿泊先
1801 享和 1 4(6) 22(2) 第二次 江ノ島・夷屋吉右衛門 茅ヶ崎村南郷・江戸屋八郎左衛門
1801 享和 1 6(7) 4(14) 第二次 平塚宿・江戸屋勘兵衛 戸塚宿・尾張屋半兵衛
1803 享和 3 2(4) 28(19) 第四次 藤澤宿・又兵衛 大磯宿・善左衛門
1805 文化 2 2(3) 28(28) 第五次 藤澤宿 大磯宿
1808 文化 5 1(2) 27(23) 第六次 藤澤宿・吉田屋仁兵衛 小田原城下・清水彦十郎
1812 文化 8 11(1) 27(11) 第八次 藤澤宿・吉田屋仁兵衛/平野屋甚七 田村・松屋与左衛門/蔦屋甚五左衛門
1815 文化12 4(6) 29(6) 第九次 藤澤宿・吉田屋仁兵衛 小田原城下・清水彦十郎
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鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

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