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第0230話 鵠沼文化人百選 その019 松岡静雄

プロフィール

  松岡静雄 (まつおか しずお 1879-1936)は海軍軍人→民族学者・言語学者  兵庫県神崎郡福崎町南田原出身
 代々医者と儒学者を以て続いた松岡家の七男、いわゆる「松岡五兄弟」4番目として生まれた。幼少から聡明で、 小学校は殆ど登校せず、中学には2か月で退学し、独学で漢学を学んだが、急遽海軍兵学校を受験、卒業後日露戦争では千代田航海長として参戦した。 兵学校教官、オーストリア駐在武官を歴任。 第一次世界大戦では巡洋艦筑波の副長としてポナペ島を占領した。その後病を得て第一次大戦史の編纂に回り、大正7年に病気を理由に海軍を去った。退職後、 太平洋諸島開発の基本調査のため、 調査船「来嶋丸」を派遣したが、大震災のため頓挫した。
 享年:59・墓所:日野公園墓地
 最初の妻愛子(東京市長田尻稲次郎の次女)は結婚の翌年に病没し、二番目に神奈川県令野村靖の五女初子と結婚して一男三女を設けた。長男 磐木(1919-1995)は法政大学教授(経営学)である。

鵠沼とのゆかり

  鵠沼に来たのは震災直前で、当初納屋(なんや)の山口家の離れに住み、震災後鵠沼海岸7-18-14に神楽舎(ささらのや)と称する小庵を結んだ。震災時に遭難した東久邇宮家の王子師正王の遺体輸送に軍艦を回航させたり、47体の遺体の荼毘を指導したりとの逸話が残っている。神楽舎で南方語学・南方民族学・日本歴史に関する多くの著作を精力的に発表し続けた。神楽舎には辰野隆や吉野秀雄らが足繁く通ったという。家族に囲まれ鵠沼で没した。

松岡五兄弟

  • 松岡鼎 - 医師
  • 井上通泰(松岡泰蔵) - 国文学者、歌人、医師
  • 柳田國男 - 民俗学者 文化勲章受章
  • 松岡静雄 - 海軍軍人→民族学者・言語学者
  • 松岡輝夫(松岡映丘) - 日本画家 長谷川路可の恩師

松岡静雄 鵠沼関係年譜
    
西暦 和暦 記                        事
1918 大正 7 12   海軍軍人・民族学者=松岡静雄(1877-1936)、海軍を依願退職
1923 大正12   海軍大佐・民族学者=松岡静雄(1878-1936)、鵠沼の山口紋蔵の別棟に滞在
1923 大正12 9 1 東久邇宮第二王子師正王、吉村家別荘で圧死→遺体を引取りに軍艦を鵠沼沖に廻航させる
1923 大正12 9   関東大震災犠牲者の荼毘に際し、自警団・青年団を指導
1923 大正12   鵠沼西海岸(鵠沼海岸7-18-14)に居を構え、《神楽舎(ささらのや)》と名付ける
1924 大正13 12   『爪畦史』を岩波書店から刊行
1924 大正13     脳溢血で倒れる(47才)
1925 大正14 3   『通俗文法講話』を国語書院から刊行
1925 大正14 9   『中間階級の研究』を聚英閣から刊行
1925 大正14 10   『太平洋民族誌』を岡書院から刊行
1926 大正15 10   『チャモロ語の研究』を郷土研究社から刊行
1926 大正15 12   『日本古族誌』を刀江書院から刊行
1926 大正15     『日本言語学』を刀江書院から刊行
1927 昭和 2 7   『ミクロネシア民族誌』(岡書院)を刊行
1927 昭和 2     『播磨風土記物語』を刀江書院から刊行
1928 昭和 3 4   『播常陸風土記物語』を刀江書院から刊行
1928 昭和 3 5   『民族学より見たる東歌と防人歌』を大岡山書店から刊行
1928 昭和 3 9   『中央カロリン語の研究』を郷土研究社から刊行
1928 昭和 3 12   『日本国体本義』を日本国体本義編纂審議会から刊行
1929 昭和 4 3   『日本古語大辞典』第1巻(語誌)を刀江書院から刊行
1929 昭和 4 6   『マーシャル語の研究』を郷土研究社から刊行
1929 昭和 4 12   『日本古語大辞典』第2巻(訓話)を刀江書院から刊行
1930 昭和 5 3   『パラウ語の研究』を郷土研究社から発行
1930 昭和 5 4   『中等学校に於ける国語研究並に教授法』を発行
1930 昭和 5 7   『歌学』を新興学会出版部から発行
1930 昭和 5 9   『紀記論究神代篇1創世記』を新興学会出版部から発行
1930 昭和 5 10   『ボナペ語の研究』を郷土研究社から発行
1931 昭和 6 4   『紀記論究神代篇2諾冊二尊』を同文館から発行
1931 昭和 6 5   『紀記論究神代篇3高天原』を同文館から発行
1931 昭和 6 6   『紀記論究神代篇4出雲伝説』を同文館から発行
1931 昭和 6 7   『紀記論究神代篇5国譲』を同文館から発行
1931 昭和 6 8   『紀記論究神代篇6高千穂時代』を同文館から発行
1931 昭和 6 8   『ヤップ語の研究』を郷土研究社から発行
1931 昭和 6 9   『紀記論究建国篇1神武天皇』を同文館から発行
1931 昭和 6 11   『紀記論究建国篇2大和欠史時代』を同文館から発行
1931 昭和 6 12   『紀記論究建国篇3師木宮』を同文館から発行
1931 昭和 6     この頃、歌人=吉野秀雄(1902-1967)が松岡静雄の書斎神楽舎を足しげく訪問
1932 昭和 7 2   『紀記論究建国篇4日代官』を同文館から発行
1932 昭和 7 4   『紀記論究建国篇5国内統一』を同文館から発行
1932 昭和 7 6   『紀記論究建国篇6外藩帰伏』を同文館から発行
1932 昭和 7 7   『伊予上代史考 伊曽乃神社』を郷土研究社から発行
1932 昭和 7 9   『紀記論究外篇古代歌謡』(上)を同文館から発行
1932 昭和 7 11   『紀記論究外篇古代歌謡』(下)を同文館から発行
1933 昭和 8 9   『国語と民族思想』第1輯発行
1934 昭和 9 2   『万葉集論究』第1輯を竜華社から発行
1934 昭和 9 2   『国語と民族思想』第2輯発行
1934 昭和 9 3 30 詩人=秋田雨雀(1883-1962)、松岡静雄宅で結核療養中の娘=千代子を見舞い、一泊
1934 昭和 9 5   『国語と民族思想』第3輯(国語教育是正号)発行
1934 昭和 9 6   『万葉集論究』第2輯を竜華社から発行
1934 昭和 9 9   『国語と民族思想』第4輯(上代思想研究号)発行
1935 昭和10 1   『国語と民族思想』第5輯(文法研究号)発行
1935 昭和10 1   『簡易文典』を発行、実費1部24銭
1935 昭和10 3   『ミクロネシア語の綜合研究』を岩波書店から発行
1935 昭和10 6   『有田縁歌と防人歌』を瑞穂書院から発行
1935 昭和10 10   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第1輯発行
1935 昭和10 11 21 松岡静雄家で湘南国語研究会の例会開催
1935 昭和10 11   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第2輯発行(会費30銭であった)
1935 昭和10 12   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第3輯発行
1936 昭和11 1   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第4輯発行
1936 昭和11 3   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第5輯発行
1936 昭和11 4 15 秋田雨雀、鵠沼で結核療養中の娘=千代子を見舞い、松岡家で馳走になり、夜帰京
1936 昭和11 4   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第6輯発行(活字印刷となる)
1936 昭和11 5 9 病革る
1936 昭和11 5 20 病室で写真を撮る
1936 昭和11 5 23 民族学者=松岡静雄、午後0時55分 妻子門弟にかこまれて没 享年59
1936 昭和11 5   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第7輯発行
1936 昭和11 6   『国体明徴上の一考察』を時事新報社から発行
1936 昭和11 6   『神楽吉講堂湘南国語研究会誌』第8輯発行(黒わくのお知らせあり)
1936 昭和11 7 11 湘南国語研究の松岡静雄追悼会。記念撮影する
1936 昭和11 7   『神楽舎講堂湘南国語研究会誌』第9輯発行
1937 昭和12 5 30 松岡静雄先生之庵址碑、鵠沼海岸7-18-18に造立
1937 昭和12 12   『増補日本古語大辞典』を刀江書院から発行
1937 昭和12     『新篇日本古語辞典』を刀江書院から発行
1938 昭和13 2   『神楽台黙語』を書物展望社から発行
1938 昭和13 2   『日本固有民族信仰』を刀江書院から発行
1939 昭和14 3 22 民俗学者=柳田國男、鵠沼に松岡静雄・冬樹(甥)の墓参に訪れる[定本年譜]
1943 昭和18     松岡静雄著『ミクロネシア民族誌』岩波書店より再刊
1962 昭和37 3   『新篇日本古語辞典』再刊
1975 昭和50 3 1 野口喜久子編『砂のいろ』 法政大学出版局より刊行
1984 昭和59 11 13 鵠沼を語る会、11月例会(講演)父松岡静雄を語る:野口喜久子(研究発表)
1984 昭和59 11 13 鵠沼を語る会、会誌『鵠沼』23号刊行(神楽舎大人「松岡静雄年譜」:伊藤節堂・他)
1990 平成 2 10   松岡磐木著『ひよどりの凪の海』刊行
E-Mail:

鵠沼を語る会 副会長/鵠沼郷土資料展示室 運営委員 渡部 瞭

[参考文献]
  • 鵠沼を語る会:『鵠沼ゆかりの文化人』(2007)
  • 伊藤節堂:神楽舎大人「松岡静雄年譜」『鵠沼』第23号(1984)
 
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